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Chronicle 2nd 1st Story Renewal CD 聖戦と死神 第一部「銀色の死神」~戦場を駈ける者~ (第九巻 527ページ…) プロイツェン領オッフェンブルグ… 眩暈がする程の血の雨の薫に咽ぶことなくその男は笑っていた… フランドル暦182年『アラゴンの戦い』 アルヴァレス将軍率いる フランドル軍五千 ピレネー山脈を越え カスティリヤ領に進撃 アラゴン平原にて カスティリヤ軍 北方防衛駐留部隊一万二千を相手に開戦 勇み歩を進める毎に 足元に死が絡みつく 研ぎ澄まされてゆく刃風(かぜ)に 敵兵は戦意(こころ)惑わす 猛る兵士と軍馬の嘶き「全軍突撃!我に続け…」 白銀の甲冑…<ベルガ人の将軍>(アルベルジュ) ──時は来た、見よ!ベルガの死神だ!(Chrono, Venies! Vidies! Velesa!) 「時に…アルヴァレス卿の軍はまた勝利を収めたようですな… 倍数以上の敵軍を完膚なきまでに叩きのめしての大勝利とか」 「…銀色の死神、忌々しい<ベルガの亡霊>(アルベルジュ)め、 今や陛下よりも奴を崇拝する者まで出始めておる始末」 「丁度良い手駒もあることで御座いますし、機を見ていづれ、 目障りな英雄殿には、ご退場願うのが宜しいかと」 「手駒…ああプロイツェンで捕虜にしたあの男の事か? …破滅を演じる歴史の舞台、今宵も面白い劇が観れそうだ…」 「我ら<唯一神>(クロニカ)の名の下に…」 彼は誰が為に戦場を駈けるのか…護るべき女性(ひと)と祖国(くに)を失って尚…
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■黒の予言書に拠る史実 「Chronicle 2nd」が最も多く時間を割いているのは、詩人バラッドの悲劇から始まる、一連の叙情詩だ。 「詩人バラッドの悲劇」 から「約束の丘」「薔薇の騎士」「アーベルジュの戦い」「聖戦と死神」、そしてルーナ・バラッドが最後に「辿りつく詩」を唄うまで――。 一見して別々の物語のようだが、これらはすべて一つの糸で繋がっている。 Chronicleの記述と、物語の中である程度推測できる年代順に、一連の出来事を表にしてみた。 緑の文字は、その詳細を解説しているページへリンクしている。 Chronicle ブリタニア暦 フランドル暦 出来事 7巻 168頁 ◇詩人バラッドの悲劇 8巻 216頁 ◇約束の丘 8巻 324頁 ◇アーベルジュの戦い(ベルガ滅亡?) 9巻 468頁 ◇薔薇の騎士団(ブリタニア内乱?) 9巻 527頁 ◇聖戦と死神(オッフェンブルグの戦い) (プロイツェン滅亡) (ロンバルド滅亡) 182年 アラゴンの戦い (カスティリヤ滅亡) 627年 (帝国暦)元年 聖戦開始/カンタベリーの戦い 627年 元年 グラスミアの戦い/アルヴァレス亡命 カスティリヤ・ロンバルド・プロイツェン独立戦争 630年 4年 アルヴァレス暗殺(ヴェルセーヌ休戦会談) 635年 9年 聖戦終結 9巻 883頁 ◇辿りつく詩 ↑TOPへ
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Chronicle 2nd 1st Story Renewal CD 聖戦と死神 第三部「薔薇と死神」~歴史を紡ぐ者~ 「此処は何処なのかしら?私は確か…追われ…矢を射られ…倒れたはずだったわ…」 「気付いて良かった、大丈夫かい? 私の名はアルヴァレス、君達の村を襲った軍隊の指揮官… だったのだが…今ではもう追われる身だ…からと言っても…言い訳に過ぎぬ…私が憎いかい?」 「えぇ…憎くない…と言ったら嘘になるけれど…助けてくれた貴方のこと、私は信じたい…」 「私はベルガ人(ベルジュ)なのだよ… 亡国の仇を取る為、旧フランドルへ身を寄せた<異邦人>(アルベルジュ) この意味が解るかい…お嬢さん?この手はもう取り返しのつかない程に汚れている…」 「最初は怒りからプロイツェンを… 次に異国での居場所を確保する為ロンバルドを… そして己の願望を満たすという目的の為に、カスティリヤを滅ぼした…」 「今でも目を閉じると、鮮やかに浮かんでくる風景がある… 私にはどうしても取り戻したい場所があったのだ… そんな私に当時のキルデベルト六世陛下は約束してくれた…」 「国をあと一つ…例えばプリタニアの征服を条件に… ベルガの独立自治権を許すと…私は他人(ひと)の国を売って…自分の国を買い戻そうとしたのだ…」 「私はそんな愚かな男なのだよ…」 「そう…そんな愚かな男なら、私がここで殺してしまっても構わないわね?」 「あぁ…好きにするが良い…私は取り返しのつかない過ちを犯してしまった…」 「馬鹿!それでは何も解決しないじゃない…貴方はそれで満足かも知れない… でも貴方の仇を取ろうとする者が現れないとは限らない…その論理が繰り返し悲劇を生んでいるのよ…」 「取り返しのつく歴史なんて一つもないの、だから尊いの、だから私達は新しい歴史を創ってゆくの… 愚か者とは…過ちを犯す者のことじゃない…過ちと知ってなお、正そうしない者のことをいうのよ…」 「…ねぇ…そうでしょう?」 「お嬢さん…君は強いな…」 「えぇ…そうよ…私は強いわ、この国の未来を背負っているんだもの…」 「この国の未来?プリタニアの女王は若い娘だと聞いていたが…まさか…君が…!」 「ローザ・ギネ・アヴァロン…そう…私がこの国(プリタニア)の女王よ… 黙っていて御免なさい…でも解って欲しいの…アルヴァレス将軍…私は貴方を信じます…」 「これは…女王陛下とは露知らず、数々の非礼を…」 「お願い!畏まらないで、私はそういうの好きじゃないの、私のことはローザで良いわ…」 「それにしても貴方があの有名な「ベルガの死神」(アルベルジュ)とはね… …想像していた像(イメージ)と随分違うわね、熊のような大男だと思っていたのに…」 「…でも<ベルガの死神>(アルベルジュ)はやめた方が良いわね… この国では流行らないわ…プリタニア風に言うと… そうね、<ベルガの暴れん坊>(アーベルジュ)かしら… そっちの方がずっと素敵よ…ねぇ…そうしなさいな…?」 「何?さっきから女性(ひと)の顔をそんなに見つめて…」 「いや…最初に貴女(あなた)を助けた時、ある女性に似ていると思ったのだが…」 「思ったのだが?」 「…今にして思うと全然似ておらぬ…」 「なに!?」 ウインダミアの湖畔を白い風が駈け抜けて往く… トリストラム騎士団長率いる第六騎士団が衛る地 ランカスターへと…
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聖戦と死神 第四部「黒色の死神」~英雄の帰郷~ Chronicle 2nd←クリックで前画面に戻る アルヴァレス亡命の報は 帝国のみならず ガリア全土に強い衝撃を響かせ疾った… 時代は英雄を求め 反撃の狼煙は上げられた 旧カスティリヤ領が 帝国に対し独立宣戦を布告 旧ロンバルド領 旧プロイツェン領がそれに続き 帝国内部で高まりつつあった聖戦への反感が遂に爆発 アルヴァレスを頼り 軍・民・問わず亡命者が殺到 更に熾烈な四正面作戦を強いられた帝国は 次第に領土を削られ 国力を疲弊していった… そして…戦局の流転は 時代にひとつの決断を投げ掛ける… それは…皇帝 聖キルデベルト六世より プリタニア女王へと宛てられた一通の親書… 帝国暦四年『ベルセーヌ休戦協定会談』 帝国領イヴリーヌ ベルセーヌ宮殿 大理石の回廊を進む薔薇の女王 左にはパーシファル 右にはアルヴァレス 柱の陰には招かれざる客… 黒の教団より放たれし刺客… 死角より放たれし時(クロ)の凶弾… 嗚呼…歴史は改竄を赦さない… 凍りつく時間の中を 崩れ堕ちるアルヴァレス パーシファルの雷槍(ヤリ)が閃き 崩れ落ちるゲーフェンバウアー それは…歴史の流れが変わる瞬間だろうか? それとも最初から全て決められていのだろうか… 「…先に逝ったのか…ゲーフェンバウアー…人間(ひと)とは全く…哀しい生物(もの)だな…」 彼を誘う最期の闇 その中にさえ… 「嗚呼…朱い…何て朱い夕陽なんだ…シャルロッテ…私は必ず…必ず帰って…」 ブリタニア暦630年 英雄アルベール・アルヴァレス イヴリーヌ(ベルセーヌ)宮殿 にて暗殺者の凶弾に倒れる… 彼の墓碑銘にはルーナ・バラッドが捧げた詩の一節が刻まれた… 多くを殺し 多くを生かした 多くを悩み 多くを為した <ベルガの同胞>(アーベルジュ)ここに眠ると… ガリア全土を巻き込んでなお停まらない大戦 その終結には…更に多くの血と涙 五年の歳月を要するのである… 夕陽に染まる丘 寄り添うように並ぶ二つの墓標 白鴉が凛と羽ばたいて往く 終わらない空の向こうへ…
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■登場する国々・地名 ●Belga(ベルガ) 英雄・Albers Alvarez(アルベール・アルヴァレス)が生まれ育った地。全ての物語の始まりの地である。 ぶっちゃけて言えば、ベルギーのことだ。Welkenraedt(ウェルケンラード)も、現ベルギー・ドイツ国境付近、かのリエージュの近くに現存する。 この地については、物語でもほとんど触れられず、その支配体制も定かではない。 ただ、「アーベルジュの戦い」 の歌詞の中に、この国が敵国の侵略を受け、無惨に滅んでゆく姿を匂わせるような記述がある(歌詞が彼自身のモノローグでなかったとすれば)。 あとは「聖戦と死神」 の中での、アルヴァレスの台詞に幾つか似たようなニュアンスがある。 「私にはどうしても取り戻したい場所があったのだ」 「最初は憎しみからPreuzehn(プロイツェン)を…(滅ぼした)」 「例えばブリタニアの征服を条件に ベルガの独立自治を許すと…」 これを順に考えると、ベルガは東国のプロイツェンによって破壊され、アルヴァレスは復讐を決意。フランドル王国軍に身を投じ、プロイツェンを滅亡させた。その時点で、ベルガはフランドル王国領になったのだろう。 終生、アルヴァレスは「ベルガ人」を冠した名、「アルベルジュ」を名乗っている。アルベルジュの通り名は、「ベルガの死神」「ベルガ人の亡霊」「ベルガ人の将軍」などと訳されている。 が、最後に彼が名乗ったのは、ブリタニア風の発音と、女王ローザが悪戯っぽく授けた名前、「アーベルジュ(ベルガの暴れん坊)」だった。 結局、アルヴァレスの切望したベルガの独立が成ったかどうか解らない。 ただ、彼が埋葬された夕日に染まる丘が、故国の約束の丘であったとするならば、少なくともブリタニアとの交通が保証される地方となったに違いない。 ←戻る 次へ→
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聖戦と死神 第三部「薔薇と死神」~歴史を紡ぐ者~ Chronicle 2nd←クリックで前画面に戻る 「此処は何処なのかしら?私は確か…追われ…矢を射られ…倒れたはずだったわ…」 「気付いて良かった、大丈夫かい? 私の名はアルヴァレス、君達の村を襲った軍隊の指揮官… だったのだが…今ではもう追われる身だ…からと言っても…言い訳に過ぎぬ…私が憎いかい?」 「えぇ…憎くない…と言ったら嘘になるけれど…助けてくれた貴方のこと、私は信じたい…」 「私はベルガ人(ベルジュ)なのだよ… 亡国の仇を取る為、旧フランドルへ身を寄せた<異邦人>(アルベルジュ) この意味が解るかい…お嬢さん?この手はもう取り返しのつかない程に汚れている…」 「最初は怒りからプロイツェンを… 次に異国での居場所を確保する為ロンバルドを… そして己の願望を満たすという目的の為に、カスティリヤを滅ぼした…」 「今でも目を閉じると、鮮やかに浮かんでくる風景がある… 私にはどうしても取り戻したい場所があったのだ… そんな私に当時のキルデベルト六世陛下は約束してくれた…」 「国をあと一つ…例えばプリタニアの征服を条件に… ベルガの独立自治権を許すと…私は他人(ひと)の国を売って…自分の国を買い戻そうとしたのだ…」 「私はそんな愚かな男なのだよ…」 「そう…そんな愚かな男なら、私がここで殺してしまっても構わないわね?」 「あぁ…好きにするが良い…私は取り返しのつかない過ちを犯してしまった…」 「馬鹿!それでは何も解決しないじゃない…貴方はそれで満足かも知れない… でも貴方の仇を取ろうとする者が現れないとは限らない…その論理が繰り返し悲劇を生んでいるのよ…」 「取り返しのつく歴史なんて一つもないの、だから尊いの、だから私達は新しい歴史を創ってゆくの… 愚か者とは…過ちを犯す者のことじゃない…過ちと知ってなお、正そうしない者のことをいうのよ…」 「…ねぇ…そうでしょう?」 「お嬢さん…君は強いな…」 「えぇ…そうよ…私は強いわ、この国の未来を背負っているんだもの…」 「この国の未来?プリタニアの女王は若い娘だと聞いていたが…まさか…君が…!」 「ローザ・ギネ・アヴァロン…そう…私がこの国(プリタニア)の女王よ… 黙っていて御免なさい…でも解って欲しいの…アルヴァレス将軍…私は貴方を信じます…」 「これは…女王陛下とは露知らず、数々の非礼を…」 「お願い!畏まらないで、私はそういうの好きじゃないの、私のことはローザで良いわ…」 「それにしても貴方があの有名な「ベルガの死神」(アルベルジュ)とはね… …想像していた像(イメージ)と随分違うわね、熊のような大男だと思っていたのに…」 「…でも<ベルガの死神>(アルベルジュ)はやめた方が良いわね… この国では流行らないわ…プリタニア風に言うと… そうね、<ベルガの暴れん坊>(アーベルジュ)かしら… そっちの方がずっと素敵よ…ねぇ…そうしなさいな…?」 「何?さっきから女性(ひと)の顔をそんなに見つめて…」 「いや…最初に貴女(あなた)を助けた時、ある女性に似ていると思ったのだが…」 「思ったのだが?」 「…今にして思うと全然似ておらぬ…」 「なに!?」 ウインダミアの湖畔を白い風が駈け抜けて往く… トリストラム騎士団長率いる第六騎士団が衛る地 ランカスターへと…
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聖戦と死神 第一部「銀色の死神」~戦場を駈ける者~ Chronicle 2nd←クリックで前画面に戻る 第九巻 527ページ… プロイツェン領オッフェンブルグ… 眩暈がする程の血の雨の薫に咽ぶことなくその男は笑っていた… フランドル暦182年『アラゴンの戦い』 アルヴァレス将軍率いる フランドル軍五千 ピレネー山脈を越え カスティリヤ領に進撃 アラゴン平原にて カスティリヤ軍 北方防衛駐留部隊一万二千を相手に開戦 勇み歩を進める毎に 足元に死が絡みつく 研ぎ澄まされてゆく刃風(かぜ)に 敵兵は戦意(こころ)惑わす 猛る兵士と軍馬の嘶き「全軍突撃!我に続け…」 白銀の甲冑…<ベルガ人の将軍>(アルベルジュ) ──時は来た、見よ!ベルガの死神だ!(Chrono, Venies! Vidies! Velesa!) ──時は来た、見よ!ベルガの死神だ!(Chrono, Venies! Vidies! Velesa!) ──時は来た、見よ!ベルガの死神だ!(Chrono, Venies! Vidies! Velesa!) ──時は来た、見よ!ベルガの死神だ!(Chrono, Venies! Vidies! Velesa!) 「時に…アルヴァレス卿の軍はまた勝利を収めたようですな… 倍数以上の敵軍を完膚なきまでに叩きのめしての大勝利とか」 「…銀色の死神、忌々しい<ベルガの亡霊>(アルベルジュ)め、 今や陛下よりも奴を崇拝する者まで出始めておる始末」 「丁度良い手駒もあることで御座いますし、機を見ていづれ、 目障りな英雄殿には、ご退場願うのが宜しいかと」 「手駒…ああプロイツェンで捕虜にしたあの男の事か? …破滅を演じる歴史の舞台、今宵も面白い劇(ゆめ)が観れそうだ…」 「我ら<唯一神>(クロニカ)の名の下に…」 彼は誰が為に戦場を駈けるのか…護るべき女性(ひと)と祖国(くに)を失って尚…
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■ガリアとは 「聖戦と死神」の舞台は、 Garia (ガリア)と総称される地方である。 作中で登場する国々や地名――たとえば Britannia や Preuzehn Aragón など、実在するこれらの名を見る限り、この<ガリア>は、我々の知る「ガリア」とそう違わない世界であると推測される。 つまり、アーベルジュが戦い抜けたこの世界は、我々の世界でいうヨーロッパと全く同じか、鏡像の関係にある世界と考えて差し支えないだろう。 このへん、あんまり深く考えると、本編の「黒の予言書」の世界観に引っかかってくるので、これ以上の言及は避けたい。まあ、ドナウ以西のヨーロッパ全土を舞台とした、架空のガリア軍記物と認識しておこう。 ※ちなみに、「ガリア」を辞書で調べると、 ――ローマ時代、ピレネー山脈とライン川の間のケルト人居住地域を呼んだラテン語の古地名。ほぼフランスの領域に当たる。ゴール。 (三省堂提供「大辞林 第二版」より) とある。その通りカエサルの「ガリア戦記」は限定された地域が舞台だが、 「聖戦と死神」では、イベリア半島以西、ブリテン島、北イタリアまでもが舞台になる。 ■いつ頃の話か 正直言って、特定するのは難しい。 騎士道華やかりし頃の「中世ヨーロッパ」と、漠然と考える方がいいだろう。 我々の世界のお話ならば、宗教の変移を観察するのも一つの手だが、「聖戦と死神」には、はっきりと国際宗教を匂わす描写が登場しない。 強いて挙げれば、フランドル帝国軍がブリタニアに進軍したとき連呼している「邪教の使徒は根絶やしにしろ」 というスローガン。 そしてブリタニア王国の 革命王女Rose Guine Avalon(ローザ・ギネ・アヴァロン)が、その決起の時、国民を前に光の女神 Brigid へ誓いを立てているシーンだ。 ブリギッドあるいはブリジッド神は、ケルト神話では火の女神である。後にイングランドを制圧したキリスト教会は、「邪教」ケルト神話の伝承を、遙かアイルランドの彼方へ駆逐してゆくが、ブリギッド信仰には手が出せず、聖ブリギッドとして教会の信仰体系に取り込んだ。 このあたりの描写から大雑把に考えると、 ブリタニアは大陸宗教に「帰依」しておらず、独自の神話を国民宗教として頂いていたようだ。 ところで、こうしてブリタニアを見ていると、ケルト神話とキリスト教が混在した形で複数の騎士物語を綴る世界、「アーサー王物語」をどうしても連想してしまう。ちょうど国もおなじだし、アヴァロンという響きもあり、何となく納得できそうな世界観ではある。 アーサー王のモデルといわれるローマ人総督アルトリウス(アルトリアでも可(;´Д`)は5~6世紀頃の人物だが、そこまで昔の話では無かろうから、カール大帝の活躍した8世紀あたりという線をひとつの候補に考えたい。 さらに時代を進めると、今度は十字軍のような聖俗一致の世界観になってしまうが、「聖戦」を「十字軍」に置き換えると、それも納得のいく時代である。イベリア半島にイスラム勢力がいないとなると、一四世紀も過ぎ、火砲がそろそろ出現する時代だ。中世の末期といってよい頃だが、これはこれで一つの候補であろう。 --- ブリタニアばかり見てきたが、Flandre(フランドル)王国もぼやけている。国王のChildebert(キルデベルト)6世は、国号を神聖フランドル帝国としているが、この逸話のモデルとして真っ先に思いつくのは、神聖ローマ帝国だろう。イメージとしては、そこれそフランク王国のカール大帝が再興した西ローマ帝国がしっくりくる。教皇の絶対権を後ろ盾に持ちながら、世俗権は皇帝が有するという、独特の支配体制だ。 神聖フランドル帝国の最大版図はすさまじく、文字通り ガリア 全土をほぼ攻略し尽くしている。まさにローマ帝国の再現。 後世(あるなら)の歴史好きの少年たちは、彗星のように現れ、嵐のように暴れ回った初代皇帝、聖キルデベルト6世の英雄譚を、目を輝かせて読み耽るに違いない。 ■登場する国々・地名 前項の考察により、このアーベルジュの戦いの舞台<ガリア>を、我々の知るヨーロッパ地理と同じと見なし、地図に大まかな予測をまとめてみた。 地図がヘボイのは容赦頂きたい。これでも戦地図含めて作成に4時間かかっている( ゚Д゚) さて、 ヨーロッパ地図で見てみると、これらの国々の位置関係は、現在の我々になじみのあるものとなる。 次頁にて、それらを一つずつ見ていきたい。 ↑TOPへ 次へ→
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■登場する国々・地名 ●Castilla (カスティリヤ) これも実在の王国名。ピレネー山脈の西方、イベリア半島の大部分を支配していた。その最大版図は、今日のスペインに相当する。中世末期、イベリア半島はカスティリヤ・アラゴン・ポルトガルの三国志時代であった。 が、これより以前、レコンキスタがほぼ完成する13世紀まで、イベリア半島はイスラム教勢力によって支配されていた。 つまり、だいたいこのあたりの時代のモデルとして考えていたカール大帝のご時世には、カスティリヤ王国など存在せず、ピレネー山脈の辺境民族を緩衝として、後ウマイヤ王朝のイスラム勢力が、フランク王国など問題にならないほどの大勢力を保っていたのである。 …となると話がややこしくなるので、イスラム勢力の存在はナシということで話を進めたい。 「聖戦と死神」に登場するカスティリヤは、Pyreenes(ピレーネ)山脈を天険として、それなりの勢力をイベリア半島に保っていたようだ。 隣国フランドル王国の物騒な伐り奪り騒ぎを知り、かなり警戒していたのだろう。ピレーネ山脈国境に沿って防衛ラインを展開し、北方防衛駐留部隊として1万2千という大部隊を貼り付けている。 にも関わらず、Aragon(アラゴン)平原での邀撃戦で、半数に満たない5千のアルヴァレス軍に蹴散らされている。この場合、アルヴァレスの戦が上手すぎたと考えるべきなのだろうが、正面からの開戦にしてはえらく脆い気もする。 アルヴァレス亡命の報を聞き、真っ先に独立を宣言したのは、いちばん最後に征服されたカスティリヤであった。統治期間が短く、叛乱し易い体制であったのだろう。 ※09.06.21追記 「chronicle 2nd」発表の3年後の2007年、マキシシングルとして発売された「聖戦のイベリア」は、タイトル通りイベリア半島が舞台となっている。 この二つの物語の繋がりは明言されておらず、また世界観も異なるため、基本的には別世界という見方が強い。 唯一、「聖戦のイベリア」 の最終楽章に「彼方の軍馬の嘶き」が「国境ピレネーの頂」を超えることが無いよう憂う一説がある。この東からの侵略を連想させる表現は、隣国フランドルによる侵攻でないかと解釈しうる余地はあり、「みなさんのご想像にお任せします」 ←戻る 舞台考↑
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■アラゴンの戦い--フランドル暦182年 「己の願望を満たすという目的の為にCastillaを滅ぼした… 」 ……………… 勇壮な曲である。まず何が素晴らしいといって、あらまり嬢のいかにも戦記物という硬質な朗読口調だ。 それはさておき、アルヴァレスにとっては三度目の大遠征である。 ピレーネ山脈とは、まあ発音の違いというだけで、一般で言うピレネー山脈のことだろう。 大ヨーロッパから、イベリア半島のみをバッサリと切り分ける、南北数百キロにわたる山脈だ。平均標高は1000メートル級、主峰は3000メートルに達し、季節にかかわらず山嶺にはうっすらと雪が積もっている。 古来より、「ピレネー越え」は軍事上の課題の一つだ。たとえば「アルプス越え」のような歴史上の偉業とは言えないまでも、それを成し遂げた軍将は、相応に優れた力量を有しているはずである。 行軍に用いることが可能なルートは少なく、行く先々の峠には、敵の守備軍が駐留している。それらを蹴散らしつつ軍を進め、ようやく平坦な敵領に降り立ったと思えば、こんどは平地戦の準備をして待ちかまえている敵の大軍団と戦わねばならない。 これは逆方向から攻め寄せる時も同じであり、イベリア半島のみイスラム教圏内にあったのも、このピレネー山脈の険が東西を完全に分割していたからであろう。 ……… さて、このアラゴン平原の戦いは、文字通り平野部での会戦である。 アルヴァレスの率いるフランドル軍は、5千。これは当時の軍の規模としては、かなりまとまった数ではあるが、相対するカスティリヤの北方駐留部隊は1万2千。倍以上の兵数差である。おまけにフランドル軍は困難な「ピレーネ越え」を行った直後であり、戦力の差でいえば倍どころの話ではない。 だが、アルヴァレスは平原一面に展開する敵軍を相手に開戦し、 これを「完膚無きまでに叩きのめしての大勝利」を収めたという。 互いに戦力を削り合うような消耗戦ではなく、スパーンと敵軍を木っ端微塵に粉砕するような快勝であろう。 アルヴァレスの率いる軍とは、何故これほどに強いのだろうか。 ひとつに、アルヴァレス個人の武勇が考えられる。 歌詞を見る限り、 アルベルジュ は常に陣頭に在って、自ら剣闘を行っていたようだ。敵軍が戦意を喪失するような、その凄まじい猛将ぶりを見て、逆に味方は勇み立ち、実力以上の武勇を発揮して敵を押しまくる。白銀の甲胄を先頭に、敵の中央へ中央へと斬り進んでゆくフランドル軍の姿が目に浮かぶようだ。 次に考えられるのは、アルヴァレスの用兵。 後のブリタニア遠征の際、彼は別軍を率いて敵の後背地に躍り出、あわや戦局を一変させるところであった。このように、かれは高機動力を活かした急襲戦を得手とするタイプであったかもしれず、敵はほとんど備えのない腹背を直撃され、抵抗する間もなく蹴散らされていったものと思われる。 こうして考えると、カスティリヤ軍の脆弱さの正体が朧気に見えてくる気がする。 カスティリヤ国王がよほどの阿呆でない限り、隣国フランドル王国の野望が自国に及ぶのを懸念するはずであり、その備えは万全を期しているはずだ。その一端として、カスティリヤは万余の大部隊を北方の国境守備に展開させていた。 が、ピレーネ山脈を突破してきたフランドル軍は、ほとんど鎧袖一触という風情でこれを蹴散らした。どうも北方防衛駐留部隊は、後方の連絡を持たない孤軍として戦い、アラゴン平原のただ一戦で消滅した可能性が高い。 このとき中央および西南方を守備しているはずの本軍は、いくら友軍の必勝を信じていたとはいえ、なぜ何の手も打たなかったのだろう。 これは、打たなかったと言うより、打てなかったのではないか。 フランドル王国にとって、東のかたプロイツェンとロンバルドを攻略しているあいだ、最大の悩みどころは北のブリタニアと西のカスティリヤのはずだ。 このうちブリタニアは薔薇革命騒ぎの余波で動けないとして、問題は西のカスティリヤだ。 カスティリヤ国王が野心家であれば、ピレーネの険を突破してでも、がら空きのフランドル領に兵を進めるであろう。 これを防ぐには外交か計略しかなく、フランドル国王は、西方と不可侵条約でも結び、後背の憂いを断ったうえで東方の経略に専念したのではなかろうか。 そして東方運営にある程度の目処がついたか、あるいはそれより前に、切り札である アルベルジュ を西方国境に派遣し、神速の進軍で国境を衝かしめたのではないか、と妄想してみる。 これならば、カスティリヤ軍にとっては、まさに宣戦布告無き奇襲にも近い、一方的な攻撃になる。 念のために展開させていた防衛軍は、敵将アルヴァレスに手もなく突き崩され、おっとりと編成途上にあった中央軍や西方軍は、神出鬼没のアルヴァレス軍に次々と各個に撃破され、カスティリヤはあっというまに滅亡した――というシナリオが描かれる。 この妄想が実設定からどれだけ離れているかは解らないが、どちらにしてもキルデベルト六世の梟雄ぶりは油断ならないというところだろう。 ※09.06.21追記 カスティリャの項に記したように、「Chronicle 2nd」発表の3年後の2007年、マキシシングルとして発売された「聖戦のイベリア」は、タイトル通りイベリア半島が舞台となっている。 二作品の繋がりは明示されていないが、東方から軍馬の嘶きが迫りつつある、と暗示するような一節があり、その解釈は聞き手に委ねられている。 イロイロと無理はあるが、仮に「聖戦と死神」 と「聖戦のイベリア」が同一世界であるとすれば、このときのカスティリヤは、「レコンキスタ」により回教勢力を駆逐したばかりの連合政体ということになる。 この満身創痍の状況で、満を持したフランドル王国から進撃されればひとたまりもないであろう。アラゴン平原でのあまりに呆気ない敗北の理由と、取れなくもない。 戻る